プラスチックの定義
プラスチックについてJIS(日本工業規格)では下記のように定義しています。
JIS-6900 プラスチック(plastic)
必須の構成成分として高重合体を含みかつ完成製品への加工のある段階で流れによって形を与え得る材料(同様の流れによって形を与え得る弾性材料はプラスチックとして考えない)
つまり高重合体(高分子)を主原料に、流動して製品へと加工された材料をプラスチックと呼びます。括弧で言及している弾性材料とはゴムやエラストマーの事で、これらはプラスチックに含まれません。
定義的に「樹脂」は加工される前の原料であり、「プラスチック」は成形品を指します。
プラスチックの正体
プラスチックは鎖状高分子
プラスチックを科学的に調べてみると、非常に大きい分子、つまり「高分子」からできている。形状はネックレスチェーン(鎖)のように細長い形をしていて、このような分子の事を「鎖状高分子」と呼ぶ。
鎖状高分子は分子が長いため隣同士の分子が絡まったり、食い込んだりしていて、1本だけ取り出すことは簡単にはできない。そのため分子間力(分子同士が離れない力)が強い。プラスチックが水や油に強いのは分子にこうした特長があるため。
熱可塑性樹脂は鎖状高分子でできていて、熱硬化性樹脂は塊状の高分子でできている。
鎖状高分子とは
プラスチックの高分子は通常、炭素原子からできている。炭素の非常に小さい粒が、何千と一列につながった状態を想像してみるとわかり易い。隣同士の炭素は手を繋いていて、手の長さは約0.15ナノメートル、両手の角度は約110度である。鎖状高分子はこの関係を保ちながら、うねうね動いている。
そもそも分子とは「それ以上分けると性質が変わってしまう、物質の最小の単位」であり、原子の組み合わせからできている。プラスチックの分子はたくさんの原子からできていて、こうした分子を「高分子」と呼ぶ。例えばポリエチレンの分子は炭素原子1000個と水素原子2000個が結合してできている。
じつは原子がいくつ連結すればプラスチックになるかは定義されていません。なぜなら100個でプラスチックとしての性質になる物質もあれば、5000個以上連結しなければプラスチックとしての性質にならない物質もあるため。
ポリエチレンの構造
大まかな高分子のイメージができたところで、身近なプラスチックであるポリエチレンの構造を見てみよう。ポリエチレンは炭素1個に水素が2個付いたシンプルな構造。炭素には手が4本あり、余った2本の手で隣の炭素とつながる。
ここでいう炭素の部分を「主鎖(しゅさ)」と呼び、水素の部分を「側鎖(そくさ)」と呼んでいる。ポリエチレン以外のプラスチックも、ほとんどが主鎖は炭素のみからできている。それはプラスチックが主鎖に炭素を持つ石油を原料とするものが多いため。
図右上にあるのが化学式で、nの部分(炭素1個と水素2個)がつながる数によって分子の大きさ(鎖の長さ)が変わる。炭素が1個~4個では気体、12個で液体、50個程度でもろい固体、1000個以上つながってポリエチレンになる。
nの数 | 物質名 | 状態 |
---|---|---|
1 | メタンガス | 気体 |
2 | エタンガス | 気体 |
3 | プロパンガス | 気体 |
12 | 灯油 | 液体 |
約50 | ワックス | もろい固体 |
1000以上 | ポリエチレン | 強靭な固体 |
まとめ
プラスチックの原料である高分子物質とは「たくさんの原子が鎖状つながって出来た固体」である。
どうでしょうか。スッキリしましたか?
参考書籍・資料
[1] トコトンやさしいプラスチック材料の本|高野菊雄|日刊工業新聞社[2] 図解プラスチック成形材料|プラスチック成形加工学会|森北出版
[3] 現場で役立つプラスチック・繊維材料のきほん|和歌山県工業技術センター|コロナ社
[4] プラスチック (図解雑学)|佐藤 功|ナツメ社
[5] 図解プラスチックのはなし|大石不二夫|日本実業出版社